癌を縮小させ、手術を容易にする術前化学療法、再発予防目的の術後(補助)化学療法などの手術前後の化学療法も重要ですが、それらにかかわらず再発・転移は起きる場合があります。
私の主力を注ぐ分野は固形癌(乳癌・肺癌・消化器癌など)の再発・転移後の治療です。
「再発後の治癒はあり得ず、化学療法の役割は緩和と延命のみ」との概念が標準的で、無論過去の治療歴が長く、症状が重いほど困難が伴いますが、抗癌剤のみでなく、最近の「分子標的剤」(抗癌剤でなく、癌の増殖するしくみを阻害する薬剤―特定の病気には本邦でもハーセプチン・アバスチン・イレッサ・タルセバ・エルビタックス・ネクサバール・スーテントなどの認可薬がある)の進歩に著しいものがあります。
大病院で癌化学療法を受けている患者さんが何種類かのレジメンを受けたのち、「今後は緩和医療を」と勧められることがあり、(具体的にホスピス等をすすめられる)これは真に治療剤が無いのでなく、「その病院の委員会で認可されたレジメンが無い」ことを意味することが多いのです。
そもそも「緩和医療」は症状のある癌の早い時期から併せ行うべきで、抗癌治療を行う医師自らが担当すべきものです。治療剤の有効性は腫瘍マーカーの下降より早く、「癌による症状」が軽減することで予想されることが多いのです。
「標準治療」に対しての私共の見解は次の通りです。
標準治療とは、殆どの大病院が採用する、薬剤、投与量、治療法を指します。これは複数種の治療法で「比較試験」(人間モルモット)で勝ち残った(優れていた)薬剤であり、投与量は一定の基準で(副作用がある程度以下で最大の有効率が得られる量にて)決められます。「治験」に参加する方は一定以下の年齢、一定以上のお元気な方との条件が付きます。病気でよれよれで歩くのがやっと、という方は除外されます。年齢、体力、症状に応じ、量を減じての化学療法を行えば、副作用を少なく、効果によりある程度長期に使用可能です。ただし、同じ標準治療といっても「癌性胸水に対するドレナージ、癒着療法」といった、一時しのぎであまり比較試験によるエビデンスのない治療もあり、いずれにしても「標準治療」はすなわち「一般的な治療」にすぎず、個々の患者様に最適か否かは患者様と医師の対話や診断行為により決定されます。
「標準治療への反抗」・・・例えばフルツロンという内服の化学療法剤があります。保険には昔から通っておりますが、「標準治療信者のDr.」はあまり処方してくれません。むしろ、UFT、ゼローダ、Ts1などの他剤が、試験をクリアした標準治療剤としてすすめられています。
昔、乳癌の術後再発予防効果の比較が行われました。UFTは常識通り2年間服用、フルツロンは半年間のみの服用で、後者は有用性が認められませんでした。これは、再発癌の方への使用経験から、半年で十分有効であろうと、当時の世話役(学界の重鎮)の意見を採用して治験が組まれたためでありました。当クリニックは長年の使用経験に照らし、ほとんど副作用なく使えると判断し、例えばDMpC(ヒスロンH、フルツロン、エンドキサン:内服剤治療)などとして採用しております。
≪症例≫ Avastin+PaclitaxelとDMpC-再発乳癌例-
2019年12月
2020年10月
約5ヶ月にわたり、リンパ節再発手術後にAvastin+Paclitaxel使用(前医)し、マーカーは上昇を続け、DMpCに変更し、マーカー下降。1年後に多発性骨転移はすべて消失。
更に標準治療への反抗の例として、乳癌抗Her2療法剤「タイケルブ」、肺癌分子標的剤「タルセバ」を例示します。ともに、朝、空腹時にタイケルブならば5錠、タルセバならば150㎎の服用が指示されていますが、それぞれ食後に服用すれば、約3倍の血中濃度が得られます。比較的朝食が均質な日本人では、タイケルブ食後2錠、タルセバ食後50mg服用で同じ効果が得られます。大量に飲んでもらって儲けようとの薬剤会社の作戦は「標準治療」ではうまくいきますが、こうした工夫をした投与法では、薬局、病院の薬剤師への十分な説明を要します。
「標準治療は参考にするが盲信しない」
上記のような治療の工夫にて、最終的に癌の治癒を目標にすることは決して夢物語ではありません。
「抗癌剤は毒なので免疫力を低下させ、有害」などといった民間療法の宣伝にまどわされないように、相談のうえ治療をはじめましょう。
「抗癌治療を小さな診療所でおこなうなんて・・・」と不安を感じる方があるかもしれませんが、
私共の治療対象としている癌はメインである再発乳癌の他に、肺癌、消化器癌、婦人科癌、腎がん、前立腺癌等々のいわゆる「固型癌」です。
なお、経過中必要に応じ保険外の免疫療法等をお勧めすることもありますが、その際には同時に保険診療はできませんので、個別に御相談いたします。