治療方法・治療例
免疫療法
乳癌癌性胸水・肝転移併発例
乳癌による「癌性胸水」と「肝転移」を同時に合併した場合、予後はきわめて不良といわれている。先ず胸水の免疫療法 (OK-AIT) にて胸水を消失させ、ついで冷凍保存した胸水中リンパ球を用いて肝動注 OK-AITを行った。肝転移巣だけでなく頚部リンパ節転移も消失し、6年間完全寛解 (CR) 継続中。併用治療剤はホルモン剤と経口抗癌剤のみ。



参考データ: 乳癌再発(転移)後の生存率
再発後の生存は、HR (ホルモン受容体) 及び HER-2 蛋白の陽性・陰性により差が大きく、癌性胸水・肝転移など「予後不良」とされる病状を多数扱う当クリ二ックでも同様ですが、「乳癌は再発後の治癒はありえない」と宣告されるほどの絶望的な病状では決してありません。下図は菅クリ二ックあるいは比叡病院で再発後の治療を受けた方の病型別生存率曲線です。HR 陰性の生存率 〈図1〉はHR陽性(図2)に劣りますが、現在最も予後不良である TN (triple negative, HR (-) HER-2 (-)) の方でさえ、平均生存期間の 25 ヶ月を頑張っている間に画期的な新薬登場に間に合う可能性があります。

進行肺癌
広範な肺内転移を有する肺腺癌。静注免疫療法 (OK-AIT) とイレッサ内服を併用し、短期間に病巣縮小。治療前後の各CT写真を示す。

治療前

治療後

肺癌転移・再発例の当クリニック・比叡病院での治療開始後(青線)又は転移再発後(赤線)の生存曲線です。47例中32 例が静脈内または胸・腹腔内・心嚢内・肝動脈内への免疫療法を受けておられますが、特に癌性胸水の方は癒着療法前の受診をおすすめします。
卵巣癌癌性腹水
女性。前医にて「原発不明の癌性腹水、予後不良」と診断され来院。前医婦人科で「卵巣癌なし」とされていた。癌性腹水に対する免疫療法 (OK-AIT) による腹水消失後開腹、大腸に浸潤した「卵巣癌肉腫」を切除、更に化学療法を追加し、術後8年無病生存中。図の矢印は腹水を示す。

再発卵巣癌 治療後生存率
卵巣癌の転移は腹膜・胸膜に起こる頻度が高く、腹水・胸水に対するOK-AITがしばしば有用です。しかし癌性腹水が消失した後も消化管の通過障害を防ぐ ため、化学療法をはじめとする全身的治療が不可欠です。菅クリニックでの免疫療法を経て、或いは直接、比叡病院で治療した転移・再発卵巣癌患者さんは最近 5年間では計21例ですが、うち16例は前医での治療経過不良の後来院された方ですので、決して予後良好とはいえません。それでも来院後の全例の平均 (50%)生存期間は20ヶ月、5年生存率は17.7%であり、
(下図「比叡病院受診後の再発・転移卵巣癌例の生存曲線」参照)化学療法の他にアバスチン、アービタックス等の分子標的剤、切除標本の免疫染色の結果適合すればホルモン剤、などを上手に組み合わせて用いれば、更なる成績向上が期待されます。
外科医として、卵巣癌との診断後あるいはその再発後、「すぐに来院」とはおすすめしませんが、胸水・腹水が指摘された患者さんは早めの「セカンドオピニオン」受診をお勧めします。

全21例、うち17例に胸水、腹水、肝(動脈)いずれかに対する局所養子免疫療法(OK-AIT)が行われています。(2008年6月集計、全て比叡病院治療例うち初治療は4例のみ)
乳癌肝転移の免疫療法
乳癌肝転移後の予後は不良であるとされ、肝転移発見後の生存期間は2年以内であるという医学界の常識があります。たと えば2002年11月発行の「再発乳癌治療ガイドブック(南江堂刊)」には「肝転移後の平均余命(50%生存期間)は10.7ヶ月、初回再発部位が肝で あった症例では7.5ヶ月」(大野ら九州ガンセンター)という絶望的な成績が示されています。
ところが、21世紀にはいり、再発乳癌一般の、また特に乳癌肝転移の予後は大きく変化してきました。
きっかけは化学療法剤の発達と、一部の予後不良であった乳癌例に抗体「ハーセプチン」が保険収載されたためです。
2001年前後の私が治療に関わった「初再発肝転移例」― 初再発の転移病巣に肝がふくまれる例、他部位再発の治療中・治療後に肝転移が診断された「続発肝転移」と区別します ― の診断後生存期間を図にて時代別に比較します。

平均(50%)生存期間・5年生存率ともに著明に改善している事が示されていると思います。
2001年以前で平均生存期間 (50%の患者さんが生存する期間)12ヶ月、それ以後で平均34ヶ月、肝転移後の生存期間は実に3倍近くまで延長しています。ではふりかえって5年生存を果たした方がどうした治療を受けてきたか、次の表で示します。
<乳癌肝転移診断後5年生存例>
| № | ホルモン受容体 HER-2 |
初発 続発 |
(先行転移) 併発転移 |
(前治療) 主治療 |
他治療 |
| (1) | 不明 不明 |
初発 |
腹膜 |
肝切+AIT | 再AIT |
| (2) | 不明 不明 |
初発 | 骨 | AIT-CR | DMpC |
| (3) | 不明 不明 |
初発 | 骨 | AIT-CR | DMpC |
| (4) | 不明 不明 |
初発 | 骨・肺 | AIT-CR | DMpC |
| (5) | ER(+) 不明 |
続発 |
(軟部・骨・肺) 卵巣・腹膜 |
(経口剤) AIT-PR |
タキサン 胸水AIT |
| 228 | ER(+)PgR(+) HER2/0 |
続発 | 軟部・骨 | (DMpC) AIT-CR |
経口剤 |
| 12 | ER(-)PgR(-) HER-2/3+ |
初発 | 無 |
(肝切・化療) AIT-PR |
タキサン ハセプチン |
| 33 | ER(-)PgR(+) HER2/0 |
初発 | 無 | (動注化療) 肝切+AIT |
タキサン 再AIT 動注化療 |
| 174 | ER(+)PgR(+) HER2/1+ |
続発 | (軟部) 骨 |
(ホルモン剤) AIT-NC |
タキサン |
| 52 | ER(-)PgR(+) HER2/0 |
初発 | 軟部 | 肝切+AIT | DMpC |
| 47 | ER(-)PgR(+) HER2/3+ |
初発 | 無 | 肝切+AIT | タキサン ハセプチン |
| 64 | ER(-)PgR(-) HER2/3+ |
初発 | 無 | 肝切 | タキサン ハセプチン |
| 75 | ER(+)PgR HER2/3+ |
初発 | 骨 | AIT PR | タキサン ハセプチン |
| 110 | ER(-)PgR(-) HER2/3+ |
初発 | 無 | 肝切 | タキサン ハセプチン |
| 149 | ER(-)PgR(+) HER2/3+ |
初発 | 無 | タキサン ハセプチン |
肝切 |
| 134 | ER(+)PgR(+) HER2/1+ |
続発 | (胸水+骨) | AIT CR | タキサン |
| 384 | ER(+)PgR(+) HER2/1 |
初発 | 無 | (前医動注化学療法) | ホルモン 経口剤 |
| 161 | ER(+)PgR(+) HER2/0+ |
初発 | 無 | 肝切+AIT | ホルモン タキサン |
| 356 | ER(+)PgR(+) HER2/2+ |
続発 | 縦郭+骨 | (ホルモン・タキサン) AIT-PR |
タキサン |
| 455 | ER(-)PgR(-) HER2/3+ |
初発 | 后腹膜 | (前医タキサン・ハセプチン) (前医肝切) |
ラパチニブ |
なお、表の「初発」は最初の再発・転移部位に肝が含まれている方で、「続発」は他の転移治療に続き肝転移が診断された方です。
過去何度か5年生存例を追加しつつ更新してきたこの表も、近年の追加のぺースの増加に伴い、今回が最後の更新とします。
つまり、乳癌肝転移で5年生存することは「まれな」ことではなくなりました。ただ注目すべき点は、これら5年生存の20例全てに肝に対する「局所治療」― 肝動脈内 OK-AIT (後述)・肝切除・動脈内化学療法などがおこなわれており、標準治療 ― 全身的化学療法・ハセプチンなど ― のみで5年生存した例が未経験であること です。
乳癌標準治療のガイドラインでは局所治療の代表として肝動脈化学療法をあげ、「推奨グレードD」(有害無益の意味)とし、一方、標準治療の標準的な生存 率は全く記載していません。局所治療のシンボルともいえる肝切除についても、乳癌に全身的転移が多く、切除を行っても残肝への再発が多いため、標準治療の 世界では切除できる病巣でも切除をすすめられることは無くなりました。(私が経験した肝切除例―多数にて免疫療法併用―の生存曲線を次のページに図示しま すので御参照下さい)
私が25年前より開始した肝動脈内のOK-432に続く培養自己リンパ球移入治療(OK-AIT)は肝切除可能例に残肝再発防止目的で、切除不能例では 転移巣縮小・消失目的で、(写真参照) 特にホルモン受容体陽性例に有用と考え、全身的内分泌化学療法との併用をおすすめしております。
表の5年生存20例中実に15例がOK-AITを受けた方です。 ホルモン受容体陽性例に有用と考える理由は、ホルモン受容体・HER-2蛋白の有無別に肝転移後生存期間をみた場合、ホルモン受容体陽性例が最もOK-AITの奏効率が高く、生存期間が最も長いからです。
<ホルモン受容体・HER2 各陽性・陰性別にみた初発肝転移例の診断後の50%生存期間>
(2001年以後著者治療例139例) MST:50%生存期間
| 初発肝転移例 | HER-2 陽性 | HER-2 陰性 |
| ホルモン受容体陽性 | n=22., MST 38ヶ月 OK-AIT 奏効 50% |
n=29., MST 49ヶ月 OK-AIT 奏効 75% |
| ホルモン受容体陰性 | n=22., MST 23ヶ月 OK-AIT 奏効 40% |
n=2., MST 6ヶ月 OK-AIT 未実施 |
上記表<肝転移診断後の50%生存期間>に示すとおり特にホルモン受容体陽性の方、あるいはHer-2蛋白陽性の方に本治療追加が有望です。
以上、今回は続発肝転移(骨・肺等他部の再発に続き肝転移が診断)は集計を略しました。
肝転移診断までに受けたホルモン・化学療法等を受けており、その量・期間により治療の困難性が増加するため、続発肝転移の予後は上記初発肝転移に劣ります。先行転移が軽微であれば、予後は初発肝転移に近似したものとなります。
肝転移の他に多臓器転移を合併する方も多数いますので、通常はリンパ球治療中より化学療法剤を併用し、リンパ球治療終了後も化学療法を(Her-2陽性 の方のハーセプチンも)継続しますので、免疫療法単独の効果とは言えませんがAITを併用することが延命に最も寄与するという統計学的データもでていま す。
乳癌がたとえ再発しても、最近の諸治療薬の進歩でただちに死を意識することはなくなりました。ただ肝臓転移がおこると少々あせる必要があります。単純な 化学療法(-標準治療)だけで良いのでしょうか?例えば肝転移後の平均生存期間が7~10ヶ月でなく34ヶ月(初発肝転移全例-乳癌転移発見時に肝転移が ある方)60ヶ月以上(肝切除+免疫療法例)であれば更に画期的な薬剤開発に間に合う確率が増えてきます。
<肝切除術およびOK-AITを実施した初発肝転移例の生存率>

セカンドオピニオンで他院の医師に相談する時、次の質問を忘れずに行って下さい。「先生の担当された乳癌肝転移の方で 5年生存者は何人いますか?」 「先生の施設での肝転移後平均生存期間は何ヶ月ですか?」
私の免疫療法(OK-AIT)は、効きが不確かであるのに、慢然と長期継続するという方式とは、全く異なり 1コース(17日間)7回の動脈注射を3コース行うという時期を限定した方法です。「奉効率54%」の数字は抗癌剤投与のみでは得られません。
具体的に本治療の手順を説明します。
通常まず、開腹手術を行い、肝動脈への「動注ポート」システムを設置し、同時に肝より「腫瘍組織」を得ます。動注ポートは開腹せずに作った場合、ポート 閉塞時には肝動脈自体がつまってしまい、その後の肝動注治療は不可能となります。開腹でポートを設置した時はポートが閉塞しても「肝動脈の枝」がつまるだ けですので、その後の再燃があっても透視でポートをうめこむことができ、動注治療のチャンスが増えます。『腫瘍組織を得る』ことは腫瘍の治療時の状況(ホ ルモンレセプターやHer-2蛋白の状況)を再検査できると同時に、腫瘍組織を用いてリンパ球の試験管内感作(リンパ球を「この腫瘍をやっつけるように」 試験管内で教育すること)に用います。
上記の手術には約一週間の入院が必要ですが、遠方にお住まいでない限り、後の免疫療法は外来で充分可能です。
ポートを設置(手術)したあとのスケジュールは図の通りです。
<治療スケジュール>

まず、免疫療法剤(ピシバニール「OK-432」)を2回動脈注射します。通常当日に熱がでますが、座薬を用い高熱を予防します。ついでリンパ球移入開始前に必要な時には、化学療法剤を投与します。
リ ンパ球は通常連日行われますが、短時間で済み、発熱等もありません。1コース(採血から最後のリンパ球まで)17日間で終了し、通常それを3コース繰り返 します。この治療終了時点でのCT評価ではまだ腫瘍が縮小していない場合もありますが、3~6ヶ月遅れて縮小、消失する場合もあり下記の維持療法を行いな がら、ポートの流れを確保し経過をみることとなります。
ポートシステムがつまらないよう(なにかあったら再度免疫療法や動注化学療法ができるよう)一週間に一度生理的食塩水:ヘパリン(抗凝固剤)を動脈注射し合わせて抗癌剤を用いていきます。縮小していても一定期間の「念押し」治療で効き目を確かなものにする必要があります。
- 定期検査で腫瘍が消失した場合は、治療を負担の軽いものに変えていくことができます。
- 腫瘍が縮小してのちにぶり返し(再増大)が見られた場合、免疫療法追加をおすすめする場合があります。(この治療は一度効けば、次の治療も再び有効である場合が多い為)
- 腫瘍が縮小せず長期的に見て、増大傾向がある場合、ポートを使って抗癌剤動脈注射をおすすめする場合があります。一方病巣が肝以外にもみられる場合、抗癌剤自体を変更して全身的に治療を行うこともあり、患者さんの腫瘍の Her-2およびホルモン受容体の状況をみて薬剤の適応を決定いたします。
以上のいろいろな工夫をして、当面の1~5年を元気で生き延びていくことが当面の目標です。
最近の癌治療新薬の発達の速度は次第に速くなっていますので、「画期的な治療薬の進歩に間に合う」確率も増えてくることが期待できます。
<AIT奏効(消失)-5年生存例>

がん性胸水に対する免疫療法
「癌性胸水」とは癌細胞の播種(ちらばること)によって、肺の表面および胸壁内方の表面の「胸膜」(昔は「肋膜」と呼んでいた)がおかされ、水がたまる状態を言います。
病変が軽いうちならば、有効な抗癌剤の全身的な使用でおさまることがまれにありますが、大量の胸水の貯留では呼吸困難がおこり、水を抜いての「胸腔内治療」が必要となります。
世界的にほとんどすべての施設で行われている方法は「胸膜癒着術-肺表面と胸壁表面の胸膜どうしを癒着させ、水がたまるスペースをなくすこと」です。
そのために胸腔内(水がたまっている部位)にドレーン(側孔の空いた管)を入れ、機械で吸引すると共にOK-432(ピシバニール)や抗癌剤、時にはある種の抗生剤を入れ、癒着させるために通常は入院が必要です。治療結果は必ずしも満足のいくものではなく、うまく癒着したとしても胸水再発はしばしばあり、また癌細胞を残したまま無理に癒着させたときは、肺のリンパ管ぞいに「癌性リンパ管症」というやっかいな肺転移がおこることがあります。
私が行っている「免疫療法」は治療の方法が全く異なっており、患者さんにそなわった「免疫の力」で胸水中の癌細胞を消してしまう =その結果として胸水が減ったり消えたりする=方法です。
癌性胸水中には、もともと癌細胞に抵抗する能力をもっていたはずの「リンパ球」とそれにうち勝ってのさばる「癌細胞」があります。力の弱いリンパ球を小量の免疫療法剤 -OK-432(ピシバニール)で活性化させ(ただしそれだけで癌細胞が消える頻度は多くありません)胸水中に含まれるピシバニール注入前後のリンパ球を分離し、試験管内で増殖させ再び患者さんの胸腔に戻す方法です。この方法をOK-432併用養子免疫療法OK-AIT(adoptive immunotherapy)と呼びます。
20年前から多数の乳癌癌性胸水の患者さんに対して、このOK-AITを試みてきましたが、癌細胞が消える率は95%、胸水の減少、消失は90%です。(体の他部位への転移などでまれに癌細胞が消えても胸水が減らない方もあります)肺癌、消化器癌などを原因とした癌性胸水でははっきりした有効率を出せる程、多数の例の経験がありませんが、乳癌と同様のスケジュールでほぼ同等の効果があります。 1990年以前の10年間の京都、滋賀の13施設の胸水症例を集め、上記のOK-AITと通常の癒着療法(OK-432大量投与および/または化学療法剤胸腔内注入)の成績を比較してみました。胸水減少率に差があるのは無論ですが生存率が全く異なり

米国の乳癌専門学術誌(BreastCancerResearch&Treatment)に発表した際にも審査員から効き方がstriking(驚くほど)であるとのコメントをもらいました。
ある治療が旧来の治療よりも有用であることを学問的に証明するためには、比較試験(患者さんをモルモットにみたてて、くじ引きで治療を受ける人、受けない人を比較して成績を出す)が必要ですが、図を見てわかるように、両者に差がありすぎ、特にくじ引きで OK-AITを受けられない患者さんの試験参加への同意が得られないことが予測され、比較試験を断念したいきさつがあります。
2004年来、私が菅典道クリニックをたちあげたきっかけは、こうした免疫療法の他に注射 1回20万円で患者さんのリンパ球を培養増殖させ静脈内に移入する免疫療法が多施設で行われるようになり、これら「新??」リンパ球療法との区別化しての正しい免疫療法を続行する必要を感じたからです。
培養したリンパ球は学問的な常識では、静脈注射では患部(癌病巣)に流れていってそこで癌細胞をたたいてくれるものではなく、逆に直接病巣に注入すると目にみえた効き方をしてれるものです。
治療スケジュールを図示します。(図2)

初回抜水にて癌細胞、リンパ球を分離し分割して連日の培養を開始します。抜水後に注入したピシバニールの副作用で発熱がありますが、5日後に再度抜水する際には胸水中にリンパ球が著明に増殖します。
このリンパ球を更に分離、分割、培養します。リンパ球が試験管内で増殖した頃(培養開始後第9、13日目)ほぼ連日のリンパ球注入を行い、癌細胞の消失、胸水の減少が得られます。このスケジュールとした理由は、大量のリンパ球をいちどに注入するよりも、それを連日分割注入した方が治療効果が高いとの基礎実験に基づくものです。この治療は、胸水がよほどの大量でない限り(近くにお住まいの方ならば)外来治療が可能です。大量に胸水がたまった方や、両側に胸水がある方は、入院して頂いて一時的に酸素吸入した方が楽に治療できます。
2000年に集計した本治療を受けた方の生存率を図3に示します。胸水は90%の率で減少、消失しますので、生命に影響するのは他の部位の転移巣の治療がうまくいくかどうかです。例え皮膚骨転移、肺転移等があっても長期生存のチャンスは充分あることが判りますが、同時に両側に胸水がたまったり、肺転移の特殊型(癌性リンパ管症)があったり、肝転移を合併する方はなお短命です。(図3○印)
しかし最近のハーセプチンをはじめとする新薬の発達やリンパ球治療の他の転移巣への応用(胸水治療に使う以外の余った胸水中リンパ球を液体窒素で凍らせておき、肝転移治療に利用する)などの工夫で、これら予後不良の方の生存も改善しつつあります。
(図3)

ただし、下記の方は本治療が不可能であるか、あるいは受けても延命効果が期待できません。
- 胸水癒着療法をすでに受け胸水がとれなくなった方
(むしろ癒着療法が全く不成功で水がたまりつづける方は可能性があります。) - 多種の抗癌剤を受け、体の多くの部位の治療が効かなくなったり、大きな肝転移を併発する等、胸水以外に治療困難な病巣がある方
- 胸水を抜いても呼吸困難がとれず長期慢性に酸素吸入を要したり、日中の50%以上寝たきりの方、あるいは病気によって全く食事ができず、栄養を高カロリー輸液にたよっている方
癌性胸水と言われて胸に管をつっこむ治療をまだ受けていない方、当クリニック来院できる方は、できるだけ患者さん御本人が来院してください。
費用についてはこちら。
即日胸水を採取し、治療の可能性を判定することができます。
2010年1月現在、乳癌癌性胸水免疫療法(OK-AIT)後の5年生存例は19例に達し、うち5例は10年以上の生存が確認されています。


Aは肺癌、Bは乳癌の方です。
それぞれ他院で、胸膜癒着療法を受けられ、癒着側A:左 B:右(それぞれ向かって右、左)が癌性リンパ管症にて治療不能、反対側の癌性胸水は両方とも、免疫療法で軽快しましたが結局癌性リンパ管症のため呼吸困難が悪化し、残念な結果となりました。
