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がん性胸水に対する免疫療法

「癌性胸水」とは癌細胞の播種(ちらばること)によって、肺の表面および胸壁内方の表面の「胸膜」(昔は「肋膜」と呼んでいた)がおかされ、水がたまる状態を言います。
病変が軽いうちならば、有効な抗癌剤の全身的な使用でおさまることがまれにありますが、大量の胸水の貯留では呼吸困難がおこり、水を抜いての「胸腔内治療」が必要となります。
世界的にほとんどすべての施設で行われている方法は「胸膜癒着術-肺表面と胸壁表面の胸膜どうしを癒着させ、水がたまるスペースをなくすこと」です。
そのために胸腔内(水がたまっている部位)にドレーン(側孔の空いた管)を入れ、機械で吸引すると共にOK-432(ピシバニール)や抗癌剤、時にはある種の抗生剤を入れ、癒着させるために入院が必要です。治療結果は必ずしも満足のいくものではなく、うまく癒着したとしても胸水再発はしばしばあり、また癌細胞を残したまま無理に癒着させるため、肺のリンパ管ぞいに「癌性リンパ管症」というやっかいな肺転移がおこることがあります。
私が行っている「免疫療法」は治療の方法が全く異なっており、患者さんにそなわった「免疫の力」で胸水中の癌細胞を消してしまう =その結果として胸水が減ったり消えたりする=方法です。

癌性胸水中には、もともと癌細胞に抵抗する能力をもっていたはずの「リンパ球」とそれにうち勝ってのさばる「癌細胞」があります。力の弱いリンパ球を小量の免疫療法剤 -OK-432(ピシバニール)で活性化させ(ただしそれだけで癌細胞が消える頻度は多くありません)胸水中に含まれるピシバニール注入前後のリンパ球を分離し、試験管内で増殖させ再び患者さんの胸腔に戻す方法です。この方法をOK-432併用養子免疫療法OK-AIT(adoptive immunotherapy)と呼びます。

40年前から多数の乳癌癌性胸水の患者さんに対して、このOK-AITを試みてきましたが、癌細胞が消える率は95%、胸水の減少、消失は90%です。(体の他部位への転移などでまれに癌細胞が消えても胸水が減らない方もあります)肺癌、消化器癌などを原因とした癌性胸水でも、乳癌と同様のスケジュールでほぼ同等の効果があります。 1990年以前の10年間の京都、滋賀の13施設の胸水症例を集め、上記のOK-AITと通常の癒着療法(OK-432大量投与および/または化学療法剤胸腔内注入)の成績を比較してみました。胸水減少率に差があるのは無論ですが生存率が全く異なり

がん性胸水に対する免疫療法

米国の乳癌専門学術誌(BreastCancerResearch&Treatment)に発表した際にも審査員から効き方がstriking(驚くほど)であるとのコメントをもらいました。

ある治療が旧来の治療よりも有用であることを学問的に証明するためには、比較試験(患者さんをモルモットにみたてて、くじ引きで治療を受ける人、受けない人を比較して成績を出す)が必要ですが、図を見てわかるように、両者に差がありすぎ、特にくじ引きで OK-AITを受けられない患者さんの試験参加への同意が得られないことが予測され、比較試験を断念したいきさつがあります。

2004年来、私が菅典道クリニックをたちあげたきっかけは、こうした免疫療法の他に注射 1回20万円で患者さんのリンパ球を培養増殖させ静脈内に移入する免疫療法が多施設で行われるようになり、これら「新??」リンパ球療法との区別化しての正しい免疫療法を続行する必要を感じたからです。
培養したリンパ球は学問的な常識では、静脈注射では患部(癌病巣)に流れていってそこで癌細胞をたたいてくれるものではなく、逆に直接病巣に注入すると目にみえた効き方をしてれるものです。

治療スケジュールを図示します。(図2)

治療スケジュールを図示します。(図2)

初回抜水にて癌細胞、リンパ球を分離し分割して連日の培養を開始します。抜水後に注入したピシバニールの副作用で発熱がありますが、5日後に再度抜水する際には胸水中にリンパ球が著明に増殖します。

このリンパ球を更に分離、分割、培養します。リンパ球が試験管内で増殖した頃(培養開始後第9、13日目)ほぼ連日のリンパ球注入を行い、癌細胞の消失、胸水の減少が得られます。(下記細胞診写真参照)

 

初回胸水

ピシバニール注射後

リンパ球移入後

左乳癌

左胸水

 

 

 

左乳癌

右胸水

 

 

 

右乳癌

左胸水